不機嫌な恋なら、先生と
「なに難しい顔してるの?」と沙弥子さんは、笑う。
「私には似合わないなーと思って。可愛いんですけどね。とりあえず、流行のポイントは覚えて帰りますけど」
「また暗記?」と、笑ってから「あれはどう?」と訊いた。
マネキンが着ていたのは、デニムのペプラム付のワンピースだ。それを取って、鏡の前で合わせる。
甘すぎないけど、女性らしさもあって可愛い。
「あらっ。お客様、お似合いですね」沙弥子さんが店員みたいに言う。
「ライダースジャケットとあわせたいな」と、コーディネートがすんなり浮かんだ。
「小物にアクセントカラーとか柄を持ってきても可愛いんじゃない?」と、近くにあった沙弥子さんは、ビンテージ風のスカーフをあわせた。
「オーダーする?」
「えーっと」
「春が楽しみになるよ。そういうワクワクが雑誌を作る力になるんだから、たまにはこういうこともしてみたら?同じようなの着てないでさ」
少し悩んだけど、ワンピースをオーダーした。沙弥子さんが言うように少しだけ、春が待ち遠しくなった。