不機嫌な恋なら、先生と

「なに難しい顔してるの?」と沙弥子さんは、笑う。

「私には似合わないなーと思って。可愛いんですけどね。とりあえず、流行のポイントは覚えて帰りますけど」

「また暗記?」と、笑ってから「あれはどう?」と訊いた。

マネキンが着ていたのは、デニムのペプラム付のワンピースだ。それを取って、鏡の前で合わせる。

甘すぎないけど、女性らしさもあって可愛い。

「あらっ。お客様、お似合いですね」沙弥子さんが店員みたいに言う。

「ライダースジャケットとあわせたいな」と、コーディネートがすんなり浮かんだ。

「小物にアクセントカラーとか柄を持ってきても可愛いんじゃない?」と、近くにあった沙弥子さんは、ビンテージ風のスカーフをあわせた。

「オーダーする?」

「えーっと」

「春が楽しみになるよ。そういうワクワクが雑誌を作る力になるんだから、たまにはこういうこともしてみたら?同じようなの着てないでさ」

少し悩んだけど、ワンピースをオーダーした。沙弥子さんが言うように少しだけ、春が待ち遠しくなった。
< 47 / 267 >

この作品をシェア

pagetop