不機嫌な恋なら、先生と
図書館とプレゼント<8年前>
待ちどおしかった凛翔先生との約束の日。
区の図書館で待ち合わせをした。
一時間くらい勉強してから先生は、「もっと勉強する?」と訊いて迷った。先生がここにいてくれるなら、勉強を選ぶし、そうじゃないなら私も帰りたかったからだ。
「先生は?」
「んー。休みだから、どこか行きたい気分でもあるけど。受験生だし」と、私に気を遣うそぶりを見せる。
「私、今日、朝から勉強したから、ちょっとさぼっても大丈夫です」
そんなことしてないのに、一緒にいたいから嘘を吐いた。
「じゃあちょっと歩く?公園あったよね」
「はい」
先生ももう少し一緒にいたいと思ってくれたことが嬉しかった。
二人で外を歩くって、この前の放課後から奇跡が続いてるみたいだ。
銀杏のカーペットみたいな並木通りを歩いてると好きだなって、踏みしめて感じる。
ハラハラと落ちてくる銀杏が地面に降り積もるように、私の好きも降り積もる。嬉しくなって、すぐ悲しくなった。先生には彼女がいて、私は、あくまでも生徒だから。
「ぎゃっ」と落ち葉に足をとられ、滑った。後ろに倒れそうになった私の腰に腕を回し、先生が受け止めた。
顔が近くて、驚く。
「大丈夫か?」
「大丈夫です」
「ぎゃって……もっと可愛く驚けよ」
肩を揺らして笑う。
「無理ですよ!本当に驚いたんだもん」