不機嫌な恋なら、先生と

待ち合わせは本屋で


校了明けの日曜日。

「今日は仕事です」と呟いてみる。

連日の徹夜が祟って、あまりにもひどい顔だったから、朝からパックをして、保湿も十分。気休めにむくみをとる小顔マッサージもしてみた。

ちょっとすっきりした気持ちになって、メイクを変えてみようかなって、気分にもなる。

Grantのメイクのページを開いてマネする。大人気のヘアメークアーティストがセクシーアイの作り方を教えてくれてるけど、ちょっとうまくいかない。

薄化粧と言われるわけがわかった。メイクを終えるといつもより意志を持っていそうな目に見えたから。なんとなく違和感を感じてしまい、結局、アイメイクを薄くぼかして、いつもと同じような顔の出来上がり。

少し早めに出て、待ち合わせの駅ビルの中の書店には十五分前には着いていた。

女性ファッション誌を回り、文芸書へ向かう。新書のコーナーをチェックしながら、先生の書籍がふと気になり探してしまった。

あ、平積みにされてると、パラパラとページをめくる。

今、連載している小説も、こういう形になるんだろうな。想像すると、胸がジンと熱くなった。

本当に小説家になったんだ。

先生は、小説を書いたら読ませると言ったけど、私に見せることはなかったし、デビューのきっかけは、大学三年生のときに応募した小説だ。
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