不機嫌な恋なら、先生と
「え……」
予想と反した答えにどう反応していいか、わからない。
「きっとチョコ用意してますよ。いいなー、ラブラブ」と冷やかすと、先生はチョコをつまんでもうひとつ食べた。
口の中で溶かしているのか少し黙って、「どっちでもいいんだよな」そう呟いた。
「どっちでもいいって?チョコ欲しくないの?」
「チョコ欲しくないっていうか……」
「うん」
「まあ、いろいろあるんだよ」と、またコーヒーを飲む。
「ふうん、いろいろ」
「中学生にはわからないだろうね」
「中学生だって恋くらいしますよ」
「なに?好きな人いるの?初耳なんだけど」と私を見た。
「……言ってませんもん」
「へー。どういう人?っていうか、学校、女子しかいないんでしょ?もしかして先生とか?」
そう言って、どきりとした。
だけど、そこで言った先生とは中学校の先生であって、きっと自分のことではない。そう思ったに違いない。
「そうです」と涼しい顔で答えると、初めて動揺したような顔をして、驚いた。
「えっ?じゃあ卒業したら告白とかするの?」
「何もしませんよ。見てるだけで良かったから」
「だよな。相手いくつ?中学生は無理だろ」と言うから、今度は私を刃物で刺すみたいに傷つけた。
それは、凛翔先生が、私を無理だといったみたいだったからだ。