不機嫌な恋なら、先生と
「時間かかる?」
「そうですね。最低でも二時間くらい冷やしたほうがいいと思います」
「そっか。なんか飲む?コーヒーか……」
「あ、私、淹れます」
「条件反射みたいだな」と先生は笑った。その意味がわかったけど聞き返さなかった。
「これ使っていいですか?」
食器棚から白黒の幾何学模様のペアマグカップを見つけ、手にとった。
お湯を沸かす。コーヒーカップを温めたり、蒸らす時間が、好きなのは、いつからだろう。
リビングに行くと、映画も好きというのは本当らしく、棚に沢山のブルーレイディスクが並べてあった。大きめのテレビのサイドにはスピーカーが置いてある。
マグカップに口をつける先生の顔がうまく見れなかった。
ソファはひとつしかなくて、床に座ったら、こっちに座ればと促され、並んで座った。
何か映画見る?と言うけど、二時間二人きりで同じ映像を眺めるというのは耐え難かった。
「いや、大丈夫です」
「じゃあドラマとかは?今、人気だっていう……なんだっけ、あれ」
「人気ドラマ?もしかして先週のみそ恋、録画してますか?」
みそ恋とは、十時に放送している恋愛ドラマだ。
三十路の顔の怖いキャリアウーマンが、バイの年下犬系男子に振り回されるラブコメディ。前回、いいところで終わったんだよね。
「食いつきいいな。うん、それ録画してあるけど」
「見たいです!」
と、先週、録画を忘れ、見逃してしまったのを思い出し、素でお願いしてしまった。