不機嫌な恋なら、先生と
再生を押すと、「これそんなに面白いの?」と訊く。
「え?見てないんですか?」
「うん。恋愛ドラマってあんまりはまったことないから。会社の人が面白いっていうから、どういうのかなって思って録画してみたけど、一回も見てない」
「もったいない。面白いですよ」
そういってからハッと固まってしまった。
前回、ヒロインと年下男子が勢いでラブホテルに行ってしまったんだ。シーンはホテルのでかでかとしたベッドの中から始まり、上半身裸の俳優が映った。
目のやり場に困る。まるで親と見るラブシーンみたいに気まずいものがあった。
こういうとき、男性ってどう思っているんだろう。やっぱり先生のほうに顔を向けられなかった。
どうやら二人は未遂に終わったらしく、場面はオフィスに変わった。
「そ……それに、この人、かっこよくないですか?」と、取り繕うように上司役の俳優を指差した。
「好きなの?」
「はい」と機嫌よく言うと、テレビが真っ暗になった。
「停電?」なわけはなく、先生がリモコンで消していた。
「せ……先生!」
「いや。彼氏いるのに、浮気はいけないだろ」
「そ……それとこれとは別です。大体、浮気って、画面の中の彼に会えるわけないじゃないですか」
「会うかもしれない。それこそ、取材とか」
「会えても何も起きないです。私が舞い上がるくらいですよ」と無駄に胸を張った。
それはそうだ。タレントさんと仲良くなるなんてスキルを持ち合わせてないし、見染められるような外見でもないのはわかってる。