不機嫌な恋なら、先生と

「先生、コーヒー飲みます?」

「淹れてくれるの?」

「はい。うち、パパがコーヒー好きでこだわってるから、おいしいと思います」

さっきママが淹れてくれた紅茶はもう空になっていた。

二コマ目が終わって先生に訊いたら、じゃあ飲もうかなって言ってくれて、「おいしい」と先生が喜んでくれたから、勉強の終わりに先生とコーヒーを飲んで十分くらい話して帰る。それが家庭教師の流れとなった。

私は段々とタメ口と敬語が混ざる言葉遣いになっていって、先生は段々と学校だけの話だったのが、プライベートの話もしてくれるようになった。

なつめちゃんから、なつめに呼び方が変わった。

その頃には、私は先生のことが好きだった。初恋だった。

私の初めてを先生に捧げて人生終わりたいなと夢見がちなことを思い描いてしまうほど。

だけど先生は高校生の頃から付き合っている二つ下の彼女がいた。

写メも一度だけ見せてもらって、先生の隣に並んでいても、やっぱりね、知ってたよ、付き合ってたのと言ってしまいたくなるくらい、お似合いだった。
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