不機嫌な恋なら、先生と
合コンは、その場で解散した。
喉が渇いたから、ミネラルウォーターでも買って帰ろう。銀座通りを歩く。街路樹にはシャンパンゴールドのLEDが装飾されていて、街並みを輝かせていた。
バカみたいだな。自分。
華やかな通りを一人で歩いていることと、久し振りに飲んだアルコールが余計にそんな気分を高めるのを手伝って笑いたくなる。
「なつめちゃん」
呼ばれて立ち止まると、さっきサギサカっていう人は知らないと答えてくれた人だった。
「どうしました?」
「いや。ひとりで帰らすの危ないと思って」
「あ。大丈夫ですよ。私、職場近いので、ここからだったら迷いません」
「いや。そういう心配じゃなくて、お酒飲んでるから、女の子ひとりは危ないでしょ」
そういうことか、斜め後ろ方向くらいの返答だった。
「すみません。でもそんなに酔ってないし」
「いいよ。一緒にいたいの」と、言うから、驚いた。
「えっと」
私は別に……は、言ってないけない科白だよなと考えていると言葉が出てこない。有無をいわさず、強引と言っていいだろう。私の腰に手を添えると、「行こう」と言った。
その瞬間、背中が粟立った。初めての彼と手を繋いだあの日を思い出す。
「あ、本当に大丈夫です」と、突っぱねる。それに彼も驚いたみたいで、目を丸くして私を見た。
今日会ったばかりの人に、触れられるって、怖いものがある。この人はきっとそういう感覚のない人なんだろう。でも、嫌なものは嫌と言っておかないと。
またわずわらしいことが起きても困るから。
「びっくりした。そんな風に突き飛ばさなくてもいいだろ?」
と、さすがに、彼も腹が立ったみたいで、私を睨んだ。