不機嫌な恋なら、先生と

「すみません」

「面倒くせー女」

そう吐き捨てるように言うと、もう興味を失くしたみたいで、駅のほうへ向かって行った。

また、やってしまった。

たまにちょっと自信を失くす。誰かと交際をして、すぐにこういう感じで振られる度。

もう少し不快を与えないような立ち振舞いが出来たらいいのに。

だから、潔癖って言われるんだ。

苦しくなりそうだから、ううん大丈夫だと、言い直した。

少し背筋を伸ばした。指先が冷えていることに気付いて、息を吹きかける。手袋、家に忘れてきたから、失敗したな。

頬に、雨が落ちた。急に降ってきた。今日も傘がない。立ち尽くしてしまう。

顔を上げると、傘をさした先生と目が合った。

「先生?」

「箱崎さん?」

駆け寄りたくなった。お酒って怖いな。こらえると、先生から近づいて、私を傘の中に入れた。

「お酒臭い」

先生が言うから、慌てて口を押えた。

「そういう先生だって、忘年会で飲んできたんじゃないんですか?」

「いや。今日は飲んでないから」

「え?そうなんですか?忘年会なのに?」

先生も二次会とか行かなかったのかな。ボーッとしていると、「さっきの友達?」と訊かれる。

「あ、はい」

あれ。そういえば先生はいつからここにいたんだろう。
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