不機嫌な恋なら、先生と
「なんで怒る?」
「なんでって、私、軽い男の人アレルギーなんです。たぶん」
「軽い男の人?嫌な思い出でもあるわけ?」
そうして浮かぶのは、中三の卒業式。彼女と一緒に私を待っていた先生。キスしたくせに。おでこにだけど。
「いえ。特に何もないですけど。女の子は私だけ特別って思ってもらいたいそういう生き物なんですよ。普通の感覚です」
「それだけ?」
「それだけですよ」
「ちなみに、俺は、箱崎さんみたいに付き合ってる人もいないから、誰かを裏切ってるわけでもないけど」
「本当ですか?そういって彼女いるんじゃないですか?」
「いたら隠さないよ」
「そういって先生が秘密の恋でもしてるんじゃないですか?」
「え?」
「だって、沙弥子さんと仲いいじゃないですか」
「……はっ?」
「いっつも、先生は、沙弥子さんのこと、誉めて。本当は沙弥子さんのこと好きなんじゃないですか?」
そういうと、ぶっと噴き出した。
「え?なんで笑うんですか?私は先生の……本音をですね」
「いや。ごめん。可愛くて」
そう言うから、今度は私が表情を変える番となる。
「か……からかわないでください。私はただ疑ってるだけですけど」
「ああ。そうだね。そう見える?」
「見えます。先生は、沙弥子さんの話ばかりするじゃないですか」