不機嫌な恋なら、先生と
第一そんなので、先生が喜ぶわけがないんだ。
おでこに触れる。先生のキスを思い出すと、いたたまれなくなる。そして、あれはなんだったんだろうと思う。
先生は、どうして私を動揺させることをするんだろう。
昔も、今も。
また違うと思って首を横に振った。
あれも只の観察だ。それか呪いのスタンプでも押されたと思おう。呪いをかけたんだ。うん。
「箱崎さん」と親しげに呼ばれて、ハッとした。
読者モデルの鳥越花愛ちゃんが編集部の入り口に立っていたからだ。
「こんにちは」
「こんにちは。あれ?今日、打ち合わせだったっけ?」
「いえ。違うんですけど。あの……今日、ヒカリさんいますか?」
「ヒカリさん、今、取材に行っていないんだ。何かあった?」
「あ。じゃあ、いいです」
「急ぎじゃない?」
少し悩んだ顔をしてから、「あの……実は、今週の撮影のことで相談があって」と、言った。
「うん。土曜日の?」
「はい。あの……やっぱりお断りしようと思って」
「えっ?断るって?」
「KAMAさんにメイクしてもらうの」
「えっ?だって花愛ちゃんがメイクをしてもらいたいって話で決まったんじゃないの?」
「そうなんですけど、やっぱりちょっと恐くなって」と、俯いた。