不機嫌な恋なら、先生と
土曜日。撮影は珍しく午後からで、時間まで編集部でアンケート作りをしていた。
先生はもう少ししたら、取材に来る予定で、なぜか私は緊張している。
ちゃんと仕事しているところ見せないとな。
ヒカリさんが、ドアから勢いよく入ってきたかと思うと、唐突に私に携帯を見せ、「ちょっとこれどういうこと?」と、罵声に近い声を浴びせた。
「えっ?」
なにを言いたいのか理解できず、受け取る。それはメールの文面で、花愛ちゃんからのものだった。
そこには今日の撮影には行けない旨が書いてあって、数日前に私にも相談してみたけど、ちゃんと話を聞いてくれなかったら、本当に辞退したいことを伝えられなかったとまで書いてある。
「これって……えっ……卒業企画の撮影に来ないってことですか?」
「それは私が聞きたいことよ。相談されてたの?あんたどんな対応したのよ?私にも報告しないで」
「どんなって……えっと、この前、花愛ちゃんがヒカリさんが不在のときに訪ねてきたんです。
ちょっと思いつめた顔をして、今日の撮影をやめたいって言われました。
でも少し話をしたら、わかりましたって撮影を受ける返事をもらったから、大丈夫だと思ってヒカリさんには言わなかったんです」
「そういうことあったら言ってって、伝えたよね?今回の撮影、メンタル面も気になるから、何かあったら言ってって」
「あ……はい。でも大丈夫って言ってたから」
「でもじゃないわよ!報告もできないわけ?」
「……すみませんでした」
「どうしよう」と、ヒカリさんは、頭を抱えた。時計を見る。撮影は午後で時間もないし、卒業企画とあれば他のモデルを代役にするわけにもいかない。
「すみません。花愛ちゃんに電話してもう一度お願いしてみます」
「無理よ。繋がらない」
電源を切っているのか、ヒカリさんの言う通り繋がらなかった。