不機嫌な恋なら、先生と

編集部にいづらくて、急騰室に逃げ込んでしまった。膝を抱え、しゃがんでしまう。

「うわっ!何?座敷わらしかと思った。どうしたの?」と落ち込む私を気にして声をかけてくれたのは、沙弥子さんだった。

「知らないうちに、やらかしてしまったみたいで」と、さっきの出来事を説明する。

「ああ。ヒカリさん、すごい気合入っていたもんね」

「KAMAさんって気難しい方なんですかね。急に企画の趣旨が変わっても受けてくれるのかな。代わりのモデルもすぐ見つかるかな」と、ブツブツ不安を呟くと、ケロリとした顔で沙弥子さんは言った。

「ああ。たぶん大丈夫だよ。KAMAなら」

「そう思います?」

うん、と言ってから少し気まずそうに「いや。実はさ、高校の先輩なんだよね」と言うから驚いた。

「え?そうなんですか?」

「そう。だから、ごねたらイケメンでも差し出せば大丈夫よ。機嫌すぐ直るから」

「なんか生け贄みたいですね。その言い方」

「生け贄以外の何者でもないね。それより、大丈夫?へこんでるみたいだけど」

「大丈夫ですけど……正直、ヒカリさんに使えないって言われて、私って本当に仕事できない人間なんだなって思いました」

「仕事、できない?」

「はい」

「別に箱崎さん、仕事ができないわけじゃないと思うけどな」

「できないですよ。ヒカリさんのいう通り、仕事のできない使えない人間なんです」

「まあ報告ミスだとしてさ、そこは褒めるところではないけど。仕事ができないとそれは関係ないでしょ」

「そうですか?」

「うん。だって、ヒカリさんも誉めてたよ」

「誉めてた?」

反芻する。
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