不機嫌な恋なら、先生と

「読者ページの回答、面白いって。
知ってる?
ヒカリさんも新人の頃、あのページから任されたみたいなんだけど、文章固すぎて先輩に毎回ほぼ全部直されたんだって。
誰だって、得意、不得意あるよね。慣れてこなしてモノにしていくものなのかもしれないけどさ。
まあだから、箱崎さん、ちょっと抜けてるところあるのも知ってるけど、それも踏まえたうえで皆で仕事してるんだからさ。
できない人と仕事してるわけじゃないんだよ。
ヒカリさんだって、本当はそのくらいわかってるよ。
だからさ、こういうときは、本当は自分はできる人間で、期待されてるから怒られてると思えばいいじゃん」

沙弥子さんだから言えるたくましい言葉だった。自分ではそんなこと簡単には思えない。期待されてるなんて、もってのほかだ。

面白いって言葉だって、たまたまに決まってる。あんないっぱいいっぱいな文章を。

だけど、励ましてくれる優しさは、落ち込んだ心に火を灯すように、わずかばかり暖めてくれる。

笑顔でこたえると、沙弥子さんは「やばい。そろそろ出ないと」と、戻っていった。

一人になり、考える。とりあえず今出来ることをやろう。落ち込んでても仕方ない。もう一度ヒカリさんに手伝いますと、申し出ないと取り戻せないから。立ち上がる。

「箱崎」と、声がした。給湯室の入り口にいたのは編集長だった。

「はい」

「なんか腑に落ちない顔してるね」

「え?」
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