レンズ越しの鼓動
相田樹の本性
「瀬戸さーん、
コーヒー買ってきて。
あっ、温かいやつね。」
キャスター付きの椅子をくるくると回し、
艶のある黒い髪を揺らしながら、
そう言った相田さん。
……なんで私がコーヒーなんて、
買ってこなくちゃいけないのよ!
「……わかりました。
でも、コーヒー買いに行ったら、
本当に打ち合わせ始めますからね!」
心のなかではそう思っていても、
言うわけにはいかない。
……相田さんが出してきた条件。
それは、
“私を撮影までの間、好きに使う”
というものだった。
わけが、わからず断ったが、
断ると相田さんはにやっと笑いながら、
「ふーん、別にいいけど。
じゃあこの話はなかったことに。」
そう言って決まって私を脅した。
……本当に、なんなのよ。
あの人が天才カメラマンじゃなきゃ、
今頃、ぶん殴ってる。