レンズ越しの鼓動


「……なにこれ。」


「……コーンスープですけど。」


「そんなの見ればわかるんだけど。
俺コーンスープ買ってこいって言ったっけ?」



氷のような冷たい視線で、
私を見下ろす相田さん。
右手には私が買ってきた、
缶のコーンスープを握りながら。


「えっと、コーヒーが売り切れてて…」


相田さんから預かった150円を握りしめ、
意気揚々と自販機に向かって、
いざ、コーヒーを買おうとボタンを押したが、なかなか出てこない。
その時、赤く光った売り切れの文字をみて、
背筋が凍った。


……どうしよう。
コーヒー無かったなんて言ったら、
小一時間はぐだくだ言われる。


相田さんと知り合って5日が経って、
相田さんがどんな人なのか、
なんとなくわかってきた。



わがままで、意地悪で、
ひねくれてて、そしてとんでもなく、

……毒舌。


「コンビニとかも近くにあったでしょ。
瀬戸さんは俺に写真撮ってほしくないの?
それとも瀬戸さんにはこれがコーヒーに見えるほどバカなの?」


「……すみません。」


浴びせられる数々の罵倒に耐え続ける。
相田さんは冷たい表情を一切変えず、
私より少し高いところから私を見下ろす。


……我慢我慢。
もしこれ以上気分を損ねたら、
写真を撮ってもらえなくなる。


そんなことを考え、
とっさに出そうになった右手を左手で抑える。



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