レンズ越しの鼓動
その罵倒に耐えるため、
俯いていた私は、
ふと、相田さんの様子が気になり、
ちらりと目線だけを上に上げた。
「……本当さ、瀬戸さん、最高。」
「……え?」
ちらりと盗み見た相田さんの表情は、
さっきまでの冷たい顔とは一転、
ぷるぷると震えながら、
必死に笑い声を噛み殺すように下を向き、
お腹を抱えて笑っている。
……え、なにこれ、どういうこと?
ひいひい、と苦しそうに声をもらしながら、
一頻り笑い終えた相田さんを見て、
意味がわからない私は、
ただただ呆然と立ち尽くす。
「こんなに笑ったの久しぶり。
何年ぶりくらいだろ。」
そう言って相田さんは、
私よりも長いまつげを揺らしながら、
目尻に浮かんだ涙をセーターの袖で拭った。
より一層意味がわからない。
でも、なにか嫌な予感と同時に、
ふつふつと怒りが沸き上がってくる。
「な、なにが面白いんですか!」
「いや、だってコーヒー無かったら
普通になにも買ってこなくてもよかったのに、わざわざ律儀に他のもの買ってきて、
しかも、コーンスープって!
コ、しか共通点ないし。」
そう言って相田さんは今度は隠すことなく、
声をあげて楽しそうに笑った。