レンズ越しの鼓動



もう相田さんの言葉は何一つ信じないと、
意気込んで、最近買った鞄からファイルと、
ノートパソコンを取りだし、
相田さんと向き合う形で清潔感溢れる白いテーブルに座った。


……テーブルもそうだけど、
相田さんの事務所って、全体的に白い。
白色が好きなのかな。

なんてくだらないことを考えながら、
ノートパソコンを開いたとき、
私の携帯が鳴り響いた。


「あ、すみません。」

「いいよ、でなよ。」


慌てて拒否ボタンを押そうとする私に、
未だに笑いが止まらないのか、
にやにやと笑いながらそう言った相田さん。


……いつまで笑ってるのよ。


まだ笑い続ける相田さんを睨みながら、
急いで電話に出る。


「はい、もしもし。瀬戸です。」


「あっ、結子!」


通話ボタンを押した瞬間、
耳元から聞こえたのは、
聞きなれた美咲の声。


「美咲?どうしたの?」


「どうしたの?じゃないよ!
大変なの!」


バタバタと向こうで騒がしい音をたてながら、
焦った様子でそう言った美咲。


……何、なんか胸騒ぎがする。


「大変って?何があったの?」


本当は不安でしかたなかったが、
焦る美咲を落ち着かせるように、
余裕がある素振りで聞いてみる。



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