レンズ越しの鼓動



「それが、
あの香水のポスター用に起用されたモデルと、
急に連絡がとれなくなったの!」


「え!?」


捲し立てるように叫んだ美咲の思いがけない言葉に、私は美咲以上の声を出した。


モデルと連絡がとれなくなって……
そんな、まさか、ドタキャン!?



「今、事務所にも連絡してみたんだけど、
事務所のほうもモデルと連絡とれてないみたいで……」



続けてそう話す美咲の声は、
耳元から聞こえているはずなのに、
どこか遠くで言っているように聞こえた。


「瀬戸さん?どうかした?」


青ざめていく私の顔色を見て、
なにかを感じ取った相田さんが、
普段は出さないような優しい声色でそう聞いてきた。

その言葉に、答える余裕もない私は
ただ呆然と立ち尽くす。




「とりあえず、
今から他の事務所にかけあってみるけど、
締め切りも近づいてるし、もしかしたら…」


美咲は話すスピードをどんどんとおとし、
最後に、“また連絡する!”と、
慌てて電話を切った。


……どうしよう。
今から探すにしても、
急にモデルを貸してくれる、
そんな良心的な事務所ある?

撮影は5日後。




「……どうしよう。」


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