レンズ越しの鼓動



「……瀬戸さん?」


「あっ、すみません……。
打ち合わせ、始めましょうか。」


落ち込んでいく気持ちを隠すように、
無理やり作った明るい声と笑顔で、
相田さんの方を向き直す。


……相田さんの視線が痛い。


必死に隠してみるものの、
相田さんはどうやら勘がいいようで、


「なにがあったの?
カメラマンの俺に言えないこと?」


「……」


「……瀬戸さんって意外と強情だよね。

あと5秒で言わなかったら、
俺、撮らないよ。

5、4、3、」


「わ、わかった!わかりました!
言いますから!」



氷のような冷たい視線と、
淡々とした声でカウントダウンを始められ、
耐えられなくなった私は慌ててそう叫んだ。


…何かあるとすぐ、そうやって脅してくる。
さっき笑顔が可愛いなんて思ったこと、
撤回してやる。


私は相田さんを睨み付けながら、
美咲から聞かされた非常事態を、
相田さんに説明した。



「モデルが決まってない?」


「……はい。先程、連絡があって、
その…ドタキャンされてしまって。」


「……結構有名なブランドのポスターだし、
プレッシャーに押し潰されたのか、
ただ面倒になったのか。
どっちにしろ、どうしてこのタイミング?」



話を聞いた相田さんは一瞬固まったあと、
腕を組んで、イライラした様子でそう言った。


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