レンズ越しの鼓動
レンズ越しの視線



「……瀬戸さん、
人形じゃないんだから、
そんな固まらないでくれる?
撮りにくいんだけど。」


「だ、だって……」


モデルとかやったことないし。



白に包まれたスタジオに、
目映いくらいの照明、
バタバタと慌ただしそうに動くスタッフ。

どれもこれも、スタッフ側に回っていたときとは全然違う光景に見えた。



……さっきから同じポーズずっとキープしたままだし、足がぷるぷるしてきた。
モデルさんってこんなに筋肉使うんだ…
体力には結構自信あったんだけどなぁ。


……すごい今更だけど、
本当に私で大丈夫なのかな。


撮影当日、
慌ただしく始まった朝。
モデルなんて経験は、初めてで、
服を何度も着替えたり、
同じポーズ、同じ角度で何枚も撮ったり、

レンズを介した向こう側がこんなにも、
眩しいことも知らなくて、
私は緊張で一ミリも動けずに、
硬直してしまっていた。


「……ガチガチに固まってるのはまだ許すけど、そんな不安そうな顔するのは、許さないよ。」


私の不安が相田さんに伝わったのか、
レンズ越しの視線が一層鋭くなる。


……相田さん、やっぱり鋭い。


できるだけ笑顔を作ろうと試みるも、
どうしても頬がひきつってしまうのが、
自分でもわかった。



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