レンズ越しの鼓動
「はぁ……」
「す、すみません……」
明らかにぎこちない笑顔を浮かべる私に、相田さんは呆れたように深いため息をついた。
……他のスタッフさんたちも苦笑いしてるし。
やっぱり、やっぱり……
「やっぱり、私にモデルなんて、
出来るわけない……」
無意識に出てしまったその言葉に、
ハッとして慌てて口元を両手で覆った。
その瞬間、辺りを見回すと、
相田さんが構えていたカメラを、
胸元のところまで下ろし、
驚いた表情で私を見た。
周りのスタッフさんたちも、
相田さんとシンクロして、
一斉にこっちを見る。
……嘘、今、声に出ちゃってた?
「あ、あの、すみません!
決して、やる気がないとかそういうわけじゃ…!」
私のバカ!
皆一生懸命、やってくれてるのに、
今更、私一人だけ後ろ向きなこと言って、
……相田さんだって、良い写真を撮ろうと、
頑張ってるのに…。
自分の発言した言葉に後悔しながら、
思わず下を向いて、
履いているヒールのつま先を見つめる。
「……5分休憩。」
俯いたままの私を見つめながら、
相田さんは持っていたカメラを置き、
不機嫌そうにそう呟いた。
その言葉とほぼ同時に、
皆、散り散りになった。