レンズ越しの鼓動
少し気分転換させた方がいいのはわかってる。
この暗い気分のままやり続けても、
また空気を悪くするだけだってこともわかってる。
…でも、足が動かない。
ろくになにもしてないくせに、
休憩なんて…。
そのままその場に立ち尽くす私に、
相田さんは小さくため息をついた。
「瀬戸さんはこっち。」
「は、はい……!」
冷たく響いたその言葉に、
慌てて襟をただして、
どこかに歩き出す相田さんに大人しくついていく。
……どんなに大声で怒鳴られるよりも、
今みたいなこんな沈黙が一番怖い。
人より長い足で、
スタスタと私の三歩先を行く相田さん。
歩いてる間、二人とも一言も発しないまま、
スタジオを出て、休憩室に入る。
他の所で休んでいるのか、
休憩室には私達の他に誰もいなかった。
「……ん。」
「え……?」
休憩室に入った瞬間、
相田さんは真っ直ぐ自販機へと向かい、
何かを買うと、ん。とそれを私にくれた。
それを受け取ると、
ほんのりと両手に熱が伝わった。
……これ、
「……コーンスープ。」
「コーヒーかと思った?
残念でした。コーンスープです。」
相田さんは少しはにかみながらそう言って、
椅子に座っていた私の隣に腰かけた。