レンズ越しの鼓動
「……前に私がコーヒーの代わりにコーンスープ買ってきたこと、まだ覚えてましたか。」
「そりゃあね。
衝撃だったんで。」
しみじみとそう言って、
自分用に買っていたコーヒーを開けた。
……やっぱりコーンスープ買ってきたこと、
ちょっと怒ってたのかな。
私はその時のことを思いだし、
思わず笑ってしまった。
「……やっと笑った。」
そう言って小さく微笑んだ相田さんが、
なんだかかっこよくて、
恥ずかしくなった私は慌てて俯いた。
そんな顔して笑うなんて、ずるい。
……なんか、心臓がうるさい。
この感覚、知ってる。
持っているコーンスープよりも、
顔が熱いのは、
こんなにも鼓動が響くのは、きっと。
私は頭を過ったその言葉を振り払うように、
ぐびっと、コーンスープを飲んだ。
「おお、良い飲みっぷりだね。」
「……ありがとうございます。
美味しいです。」
……本当は緊張で、
味なんて分からなかったけど。
私は相田さんの方を向き、
そう答えると、
相田さんはほっとしたように息を吐き、
安堵の表情を浮かべた。