レンズ越しの鼓動


……やっぱり、無理なのかな。
そもそも、スケジュール押さえるのも、
大変そうよね。

て言うか、そもそも年間に5つ前後の仕事で
生活できてるってどんだけ報酬高いの?
そんな高い報酬払う費用なんて、
うちにないわよ。

「はぁ……」


そんなことを考えて、私はまたため息をついた。

……相田樹。


なんとなく、キーボードを叩いて、
検索してみる。



そう言えば私、名前は知ってたけど、
あの人の写真、何にも知らない。


パッと画面に表示された相田樹の文字と、
その下に表示されたいくつもの写真。


「この広告の写真、
相田さんが撮ってたんだ……」


出てくる写真は、すべて、
誰もが知っている有名ブランドや、
大手企業の広告写真。


……全部、ビルの大ビジョン、
看板で見たことある。


どこにもないような雰囲気と、
見たこともないような構図。



写真をみた瞬間、
クライアントがどうしてそこまで、
相田樹という男にこだわるのか、
それがやっとわかった気がする。


……あの香水の爽やかだけど、あと引く香り。
それにこの相田さんの写真。


……やっぱり、相田さんじゃなきゃだめだ。





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