レンズ越しの鼓動



……噂通り、手強い。
でも、小細工なしに、率直に、
感じたことを伝える。

馬鹿な私は、そんな方法でしか、
伝えることを知らないから、
それをやるしかない。


「……カメラの知識もろくにない、
素人が感じたことです。

あんな写真を撮る人と、単純に編集者として、
一緒に仕事がしてみたいと思いました。

そんな理由じゃ、だめですか?」


嘘はついてない。
……若干、丁寧にオブラートな言葉で、
取り繕ったけど。


……これでだめなら、いよいよ本当に
諦めるしかないかなぁ。


そんなことを考えながら、
未だ無言のままの相田さんの言葉を待つ。



「はぁ……」

「え……っ?」


突然耳元から聞こえた深いため息に、
呆然とする。

……今のため息、
相田さんの、だよね?


それがなにを意味するため息か、
わからない私はまた体が固まってしまった。


「あ、あの……」


「明日の午前10時半頃。」


「え?」


「だーかーらー、
明日の午前10時半頃に、
そっちに行くって言ってるの。」


「ほ、本当ですか!?」



渋々といった様子で言った相田さんの言葉に、
私はデスクに向かう周りの人の目を気にせず、
飛び上がって、声を出した。


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