レンズ越しの鼓動


「こんな嘘ついてどうすんの。
あっ、でも条件がある。」


「じ、条件?」


引き受けてもらえたと思って、
浮かれていたのもつかの間、
相田さんの放った言葉に、一瞬にして、
背筋が伸びる。


「まあ、それも明日言うよ。」

「え?」

「じゃあ。」



じゃあ。という短い挨拶で、
切られてしまった会話。


……じゃあ。って。
じゃあ。って!


……私の無駄なドキドキを返してほしい。


少しのイライラをぶつけるように、
だんっと強く受話器を置き、
これから先の相田さんとの仕事のことを考え、
不安でいっぱいになった。


……あんな人としっかり、仕事、
やっていけるのかな。


< 9 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop