レンズ越しの鼓動
「こんな嘘ついてどうすんの。
あっ、でも条件がある。」
「じ、条件?」
引き受けてもらえたと思って、
浮かれていたのもつかの間、
相田さんの放った言葉に、一瞬にして、
背筋が伸びる。
「まあ、それも明日言うよ。」
「え?」
「じゃあ。」
じゃあ。という短い挨拶で、
切られてしまった会話。
……じゃあ。って。
じゃあ。って!
……私の無駄なドキドキを返してほしい。
少しのイライラをぶつけるように、
だんっと強く受話器を置き、
これから先の相田さんとの仕事のことを考え、
不安でいっぱいになった。
……あんな人としっかり、仕事、
やっていけるのかな。