恋愛図書館
「いや、ほんとに旨いよ!

ただ、誕生日に買ってもらってたのと同じ味でさ…
でもそのケーキ屋閉めちゃってて、もう味わえないと思ってたから…」


「そうなんだ…?

だったらなんか、嬉しいな。
道哉の思い出と関われたみたいで…」


しみじみと微笑む、キミの言葉が…

口の中でほろっと溶け込むティラミスみたいに。


俺の心をほろっと解いた。



「うん…
俺もすごく、嬉しいよ。

この味さ、俺と親父の大好物で…
年に1度を楽しみにしてたんだ」


ワンカットのティラミスは…
"一緒に食べた方がおいしいよ!"って、いつも俺が半分に切り分けて。

親父と2人で、ささやかな幸せを味わってた。




「そっか。

じゃあ今度は、道哉のお父さんにも作ってあげたいなぁ…」

そう優しげに目を細める結歌に…

胸がジワリと締め付けられる。



「…

…ありがと。
親父も天国で喜んでるよ…」


キミの表情が驚きに変わる。
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