恋愛図書館
自ら引き受けたそれには、理由があって…

届け先は、結歌の働いてるスイーツカフェの近くだった。



お客様の感謝を受けて役目を終えると、
弾む気持ちでそのカフェを前にした。


俺が現れたら驚くだろうな。

不意打ちの反応を楽しみに、何気に店内の様子を伺うと…

思ってもない光景に、俺の方が驚いた。


キミはその鮮やかな笑顔を、ホスト時代の後輩だった瞬に向けてて…

偶然の来客にしては、ずいぶん親しげな態度で接してて。


極め付けは…

瞬に、リボンをかけた本を渡してた。




とっさに俺は、その場から立ち去って…

頭の中の混乱と、心の中のドス黒いものを封じ込めた。






「道哉!
片付けはいいから、今日はもう上がって…
早く彼女に、美味しい料理を振舞ってやれ」


「…いえ、大丈夫です」


「遠慮するな。
今日はお客様の為に休憩を削ったんだから、その分だ」

そう店長の厚意に押し切られて。

ありがたく受けたものの、複雑な心境で帰路に着いた。
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