恋愛図書館
「あ、いえ!
今のは俺が悪かったんでっ…!」

焦る気持ちで振り切ろうとした最中…
視界に映ったその子の顔は、ものすごく不安そうで。

思わず、動けなくなった。


ふう、とひとまず深呼吸して…
その子の前に屈み込む。



「…ごめんね。びっくりしたよね?
今のはお兄さんの方が悪かったから、気にしなくていいよ?
でも危ないから、今度からは飛び出さないようにしよっか」

そう微笑んで、頭を撫でると…

愛着のある可愛い顔が、クシャリとほころぶ。


内心苛立ってた俺だけど、その笑顔に絆されてると。



「おーい、麻里子〜!?準備出来たぞ〜!」

お父さんらしき人が、その親子を呼び戻す。


「っ、はーい!

あっ、じゃあ…ほんとにすみませんっ」

ペコリとして、その子の手を引くと…

その子はもう片方の手で、俺に小さく手を振った。


なんだかくすぐったくて、あったかい気持ちでそれを返したけど。

その子が振り続ける限り身動きが取れなくて…
そんな状況に、もはや笑いが零れた。
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