恋愛図書館
その子、桜菜ちゃんは…
目の前に屈んだ俺を、探るような目でまっすぐ見つめた。
「はじめまして、桜菜ちゃん。
お話しのあいだ、待たせてごめんね?
ぼくは、早坂道哉と言います。
きみと、きみのお母さんを、ずっと探してたんだけど、今まで見つけられなくて…
ごめんね。
でもやっと、広部さんが見つけてくれたんだ。
とつぜんで、びっくりするかもしれないけど…
ぼくは、桜菜ちゃんのお父さんです。
これから桜菜ちゃんを、今までの分まで守っていきたいんだけど…
守らせてもらえるかな?」
ずっと俺を映してた、嘘や誤魔化しが効かないような澄んだ瞳が…
不安の色を映すと同時、小さく縋るような声音が零れた。
「っ…
じゃあママを、たすけてくれる…?」
「…っ、うん、がんばるよ。
ママと桜菜ちゃんを、必ず守る」
そう誓って、
砂だらけの小さな手をぎゅっとすると。
とたん桜菜ちゃんは、ポロポロと大粒の水玉を落として…
その手でぎゅう、と握り返してきた。