御曹司と溺甘ルームシェア
「寧々ちゃん、一緒に行こう」

ルンルンと鼻歌を歌うののちゃん。

毎日楽しそうでうらやましい。

ののちゃんに癒されたせいなのか、じんましんも出ていない。

冷泉の存在を忘れてののちゃんと一緒に業務用のエレベーターに乗り込むと、エレベーターの前で冷泉が人差し指と中指の間に千円札を挟んで私を挑発するようにヒラヒラさせた。

「寧々、忘れ物」

「いらない」と言いたいところだが、これがないと何も買えない。

施しみたいで嫌だと思いながらも、プライドを捨てて無言で冷泉を睨みながらお札を奪い取り、ジーンズのポケットに無造作に突っ込む。

「しっかり仕事しろよ。あと、二日酔いは脱水症状が原因だから、スポーツドリンクでも飲んどけ」

冷泉がニッと笑うとエレベーターの扉が閉まった。

奴の表情も行動も全部ムカつく。

ガタンと不気味な音を立てて動き出すエレベーター。

「ねえ、ののちゃんはこのエレベーター怖くない?」
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