御曹司と溺甘ルームシェア
部署ごとに分けられた郵便物をカートに乗せ、金髪男と部署を回る。

金髪男は帽子を被っていた。

……私も帽子で顔隠したい。

作業着でしかも素っぴんで集配なんて最悪。こんな事ならマスクしてくるんだった。

エレベーターの中では仏頂面だった金髪男だが、社員とすれ違うと「お早うございます」と真面目に挨拶をする。

仕事も真面目にやっていて、どこかで油を売る様子もない。

意外だった。

外見で不真面目だと決めつけていたかもしれない。

不真面目……は私か。

あともう少しで集配が終わるというところで、私はとんでもないものに出くわした。

自販機の前で七十代の髭をはやした老人が腕を組みながら『う~ん』と唸っている。

だが、社員はその老人を見て見ぬフリ。

……誰か気づきなさいよ。

明らかに怪しいでしょう?
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