御曹司と溺甘ルームシェア
それとも、わざと気づかないフリしてるの?

出来れば私も素通りしたい。

だって……あれは冷泉商事の会長、冷泉厳。冷泉響人の祖父。

ワインの件もあるし、今一番会いたくない人物だ。

でも、何で秘書も連れずにひとりでいるの?

ここにいるのもおかしいのに。

ああ~、気になる。会長に気づいてしまった自分が憎い。

「おい、急に立ち止まるなよ」

金髪男が不機嫌そうな顔で私を注意する。

「煩い。あそこの自販機の前にいるの、会長よ」

顎で会長の方を指すと、金髪男は目を丸くした。

「会長?あのショボいじじいが?」

金髪男が驚きの声を上げる。

「シー!声が大きい。ショボいって言うな。あの年齢で筋肉隆々の方が引くわよ。ねえ、あんた、ちょっと声かけてきてくれない?」

「はあ?何で俺が?めんどくせー」

「……使えない男ね」
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