御曹司と溺甘ルームシェア
チッと舌打ちすると、ズボンのポケットからスマホを取り出し冷泉に電話をかける。

仕事中だし出ないかな、あいつ。

そう思ってかけたけど、意外にもあいつはワンコールで電話に出た。

『どうした?』

何か心配するような張りつめた声。ひょっとして、私のじんましんを気にかけてすぐに出たのだろうか?

いいや。私をからかって楽しむような奴よ。

それは考えすぎだ。

「営業課の近くの自販機の前で会長を見かけたんだけど。しかもひとりよ。いいの?放置しておいて?」

『……悪いが、俺が行くまで引き留めておいてくれ』

冷泉がブチッと電話を切ると、私はスマホをしまいながら盛大な溜め息をついた。

私に時間稼ぎしろって言うの?

……私には関係ない。そう思うのに……放っておけなかった。

「何かお困りですか?」

にこりと笑みを浮かべ、会長に声をかける。
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