御曹司と溺甘ルームシェア
有能な男で、今の秘書室でじいさんの相手を出来るのはこいつぐらいしかいないだろう。

冷静沈着で隙がない。

「迎えが早すぎる。わしの楽しい時間を邪魔しおって」

じいさんが秘書の高木に文句を言うが、彼は涼しげな顔でそれをかわした。

「社長一人では東西鉄鋼の社長のお相手など無理ですよ。もう場が持ちません。そろそろお戻り下さい」

「ふん、使えん社長じゃな」

顔をしかめて愚痴るじいさんを俺は鼻で笑った。

「その使えん社長を婿養子に選んだのはあなたでしょう?千里眼がなかったあなたの責任ですよ」

「だが、孫は優秀じゃ。早よ親父を蹴落として社長になれ。わしもそろそろ隠居して自由になりたい」

じいさんは急に目の色を変え、俺を見据える。

この鋭い眼光、隠居するには早いだろ?

「隠居したらボケますよ」

すかさず嫌みを言うと、じいさんは苦笑した。

「……お前は身内にも容赦ないのう」
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