御曹司と溺甘ルームシェア
『腹が減っては戦は出来ぬ』だ。

食べて体力を回復しないと、また響人にいいように主導権を握られる。

でも……社食に行くなら、帽子が欲しい。

別に……響人の言うことを聞くわけじゃない。すっぴんで人前に出るのが恥ずかしいからだ。

出来ればこの作業着も着替えたいとこだけど……ジーンズで社食ってきっと目立つわよね。

辺りを見渡して高木さんを探すが、メール室内にはいない。

「ののちゃん、帽子持ってたら貸してくれないかな?」

横にいるののちゃんにお願いしてみる。

「ん?どうして?」

ののちゃんがあどけない表情で首を傾げる。

「今日、お化粧してないから、あまり人に見られたくないの」

正直に理由を話すと、「寧々ちゃん、お化粧しなくても綺麗だよ。でも、寧々ちゃんが気になるなら、貸してあげるね」と、ののちゃんに笑顔で返された。

『綺麗』だなんて、ののちゃんみたいな素直な子に言われると、頭をよしよしと撫でて頬擦りしたくなる。
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