御曹司と溺甘ルームシェア

食券の券売機もあるが、どうやら社員は現金ではなくカードで支払うらしい。給料から引かれるのか。

他の社員の様子を見ると、みんな機械に社員証をかざして支払いをしている。

カード……カード……カード。

みんな私に見せびらかして喧嘩売ってんの！

カードを見ただけで、沸々と昨日の怒りが込み上げてきた。

ののちゃんには借りられない。そうだ響人に奢らせれば良いのよ。

どうせ、社食なんて数百円だもの。たいした金額じゃないわ。

「ののちゃん、ありがとう。でも、響人がどうしても払うって言うから大丈夫よ」

ののちゃんを安心させるように笑うと、私は目の前にいる響人の目を見て意地悪く微笑んだ。

「あとで返せよ。でないと、お前お金の有り難みがわからないからな」

響人が身を屈め、私に近づき声を潜める。

奴の息が直接私の耳に当り、ゾクッとした。