御曹司と溺甘ルームシェア
記憶はなくしても……本能で雨を恐れてるのだろうか。

「熱なんてないわよ。休みの日をどう過ごそうが私の勝手でしょ!」

寧々が起き上がって俺の手から毛布を奪おうとするが、俺は渡さなかった。

「お前、雨が怖いんだな」

「……雨だと憂鬱なだけよ。アンニュイな気分になるの。みんなそうでしょう?」

一瞬間を置いてから、寧々が取り繕うように口を開く。

「確かにそうかもしれないが、お前のは違う。そう言えば、高校の時も、雨の日は休んでいたな?」

「単に雨に濡れるのが嫌だっただけ。髪だってまとまりが悪くなるし。我が儘な私らしいでしょう?もう放っておいてよ!」

高校の時は俺もそんな理由だと思っていた。

だが、目の前にいる寧々を見て悟った。

寧々は雨に怯えている。

この意地っ張り。

虚勢を張って俺を遠ざけようとしてるんだろうが、それは間違いだ。
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