御曹司と溺甘ルームシェア
彼女はしばらくマグカップの中身を凝視し、クンクンと匂いをかぐ。

俺って信用されてないな。

「毒なんか入れてない」

俺が苦笑いすると、寧々は少し口にして味を確認し、今度はゴクッと喉を鳴らしてホットミルクを飲んだ。

「……美味しい」

「だろ?」

寧々の漏らした言葉に、ニヤリとする。

彼女がホットミルクを飲んでいる間に、俺は書斎に行きスケッチブックと鉛筆を手にしてリビングに戻った。

「何よ、それ?」

寧々がスケッチブックを見て指差す。

「見てわからないのか?スケッチブックだよ」

いつもの調子で寧々をからかうと、今度は彼女も普段通りにへそを曲げた。

「そういう意味で聞いたんじゃないわ。バカにしないでよ」

「お前を描くんだよ。人物描くのは初めてなんだ。どうせお前暇なんだから付き合えよ」
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