御曹司と溺甘ルームシェア
残忍な笑みを浮かべる男の顔を、私は思い切り引っ掻く。

「お前、ふざけんな!」

頬に私の爪痕がついた男が逆上してまた私の顔を殴ろうとした。

痛みを覚悟して強く目をつぶると、ののちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえた。

「寧々ちゃん!」

あ~あ、顔面ボコボコだろうな。さすがの響人も返品するわね。

この状況の中、私はそんな呑気な事を考えた。でも……覚悟していた衝撃も痛みもない。

目をゆっくり開けると、沈痛な表情の響人の顔が近くにあった。

近くには響人が倒したのか、私に暴行した男が地面に転がっている。

「寧々?」

響人が心配そうに私に声をかける。

こんなに動揺しているこいつの顔を見るのは初めてかもしれない。
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