御曹司と溺甘ルームシェア
ううん、前にもあった。記憶の断片が甦る。

「ののちゃんは?」

ののちゃんの無事を確認したくて起き上がろうとすると、響人に止められた。

「大丈夫だ。怪我はない。大丈夫じゃないのはお前だ。無理するな」

響人がそう答えてもののちゃんが心配で目を動かして彼女の姿を探すと、岡田が彼女を慰めていた。

きっと金髪男が連絡したから、響人と岡田がここにいるんだろう。

「……よかった」

ホッとしてそう呟くと、安心したせいか身体の力が全部抜けてきて……。

「遅くなってごめん」

響人が瞳を曇らせて私の身体をギュッと抱き締めたけど、じんましんが出ると怒って抵抗する力も気力もない。

それに……顔は泣いてないけど、響人が泣いてるように思えて、いつもの調子で言葉を返した。

「……本当遅すぎ。お陰で自慢の顔がボッコボコ。責任取りなさいよ」

そう言って力なく笑うと、響人は「当然だろ」と笑ってさらに私を強く抱き締めた。

私の顔に響人の頬が触れる。伝わるこいつの温もり。

ああ……人ってこんなに温かいんだ。
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