御曹司と溺甘ルームシェア
私がおおげさに首を傾げて惚けると、冷泉は口角を上げた。

「嘘つきな唇だな。お前を見てるとムカつく」

「それはこっちの台詞よ!」

冷泉を睨んで食ってかかると、何を思ったかこいつは私の顎をつかんでその秀麗な顔を近づけた。

ふわっ。

冷たくて柔らかいものが私の唇に触れる。

冷泉は私の目を見てニヤリと笑うと、私から離れた。

それは一瞬の出来事で、私は何が起こったのかすぐにはわからなかった。

周囲も静まり返っていて、私は目を見開いたまま数十秒動けなかった。

だが、じんましんが全身に広がると、私は自分の身体をだきかかえてその場に座り込んだ。

う……嘘でしょう?こいつ……私にキスした。

ショックのあまり声も出ない。

冷泉の唇の感触が残る唇を手でごしごしと拭う。

身体中が痒い。きっと顔にもじんましんが広がっているに違いない。
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