御曹司と溺甘ルームシェア
寧々に近づき、彼女の寝顔をじっと見つめる。

血がにじんで青紫色に腫れた頬の傷。

女だし、鏡を見たらショックを受けるだろうな。代われるものなら代わってやりたい。

頬に当てている氷のうの位置をずらそうとそっと氷のうに手を触れると、寧々が「う……ん」と身じろぎした。

起こしたか?

静かに寧々の様子を窺うと、彼女は顔をしかめながらゆっくりと目を開けた。俺と目が合うと彼女は驚いた顔をして俺の名前を口にする。

「……響人?……ここは……‼」

そう呟いて、寧々はハッとした表情になり急に起き上がった。

「ののちゃんは!」

ギュッと俺のスーツの襟を掴むが、暴行された傷が痛んだのだのか寧々は顔を歪めた。

「馬鹿、急に起き上がるからだ」

俺がたしなめても寧々は自分のことはそっちのけでスーツを掴む手に力を込める。
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