御曹司と溺甘ルームシェア
「ののちゃんはどうなったの?」

「落ち着けよ。ののちゃんは怪我もないし、成介が連れて帰った。心配はいらない」

「……良かった」

寧々は俺のスーツの襟から手を離すとホッと肩を撫で下ろす。だが、頬と腹部の傷が痛んだのか「うっ……」と呻きながら身を屈めた。

「お前、少しは自分の心配したら?まだ起き上がるのは辛いだろ?」

呆れ顔で言って再び寧々を寝かせようとするが、寧々は頭を振った。

「……口の中切ったのか血の味がする。バスルームに行くわ」

腹部を押さえ、寧々がふらつきながらベッドから立ち上がる。

普通なら寧々を抱き上げてバスルームに連れていきたいところだが、バスルームへ向かう寧々の後をゆっくりついていく。

「うっ……痛い」と何度か口にしながら何とかバスルームにたどり着くと、寧々は俺の目の前でバタンとドアを閉めた。

多分、俺がいないところで頬と腹部の傷を確認したかったのだろう。
< 188 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop