御曹司と溺甘ルームシェア
その間、俺はドアの外で待機して寧々が出てくるのを待った。

十分程経っただろうか?

寧々がバスルームから出てきて、俺と目が合うと自分を嘲笑うかのように言った。

「……妖怪みたい。自分でも引くわ。よく平然としてられるわね。こんなの見たら普通は顔背けるわよ」

気丈にしているが、鏡を見てショックだったのだろう。

寧々の声は震えていた。

泣きたいのを必死で我慢しているのが痛々しい。

「婚約なんて破棄しちゃえば?顔もこんなになって私にはもう何の価値もないんじゃない?それに……サマーキャンプの時、私が襲われたの知ってるでしょう?こんな面倒な女、捨てたって誰も文句なんか言わないわよ。むしろ同情……‼」

この強がり。怖いなら怖いって言えよ。俺を遠ざけて壁を作るな。

それ以上寧々の台詞は聞けなくて、俺は彼女の口を自分の口で塞いで黙らせた。

胸が切なくなってどうしようもなかったから。

寧々に自分を否定するような言葉はもう言わせたくなかった。

彼女も過去の記憶を思い出して混乱しているんだと思う。
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