御曹司と溺甘ルームシェア
12、温かいもの
あのキスの後、響人は私をダイニングに連れていってオムライスを作ってくれた。

皿の上のオムライスを見て私は顔をしかめる。

ケチャップで描かれた目が一直線の仏頂面の女の子。

この目付きの悪いのって……。

「何このブサイク。まさか私って言うんじゃないでしょうね」

いつものように憎まれ口を叩く私。

「そのまさかだけど。お前、いつもそんな顔してるよ」

響人が意地悪く笑う。

さっきあんなキスをした男と同一人物とは思えない。

あのキスは幻だったのだろうか?

でも……私を元気づけるためにやったのかな?

「絵心なさすぎ」

文句を言いながらも、私はスプーンを手に取り食べ始めた。

卵はふわとろ、ケチャップの味は控え目で、玉ねぎは甘くて美味しい。

小さい頃、亡くなった母もこんなオムライスを作ってくれたのを覚えてる。味はもう覚えてないけど、響人の作ったのと似た味だったんじゃないだろうか。
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