御曹司と溺甘ルームシェア

ここまで酷いと現実逃避なのか他人事に思えてしまう。でも、痛みはあるわけで……。

「一生このままじゃないだけマシか」

そう自分を励まして傷は避けて洗顔を済ませ、ダイニングに向かう。

ダイニングルームのドアを開けると、私は目を丸くした。だって、響人じゃない人がキッチンでフンフンと鼻歌を歌ってたから。

髪は黒髪でセミロング。フリフリのエプロンをつけたその三十後半くらい綺麗な女性は、私の姿に気づくと頬を緩めた。

「あら、起きたのね。寧々ちゃん、おはよう」

おたまを右手に持ちながら挨拶してくる女性に挨拶を返せず、私は口をポカンと開けてその場に立ち尽くした。

これ……誰ですか？

響人の恋人？いや……顔が響人に似てる。でも、響人にお姉さんなんかいたっけ？あいつは一人っ子のはずじゃあ。ん？ん？じゃあ、これは誰？

「あら、自己紹介もしないでごめんなさい。知らない人間がいたらびっくりするわよね。でも、寧々ちゃんとは小学生の時に何度か会ってるのよ？覚えてない？」