御曹司と溺甘ルームシェア
やっぱり……お母さんがいるっていいな。

エプロン姿の響人のお母さんの姿を見ると、自分の思い出の中の母の姿と重なって目頭が熱くなった。

そんな私の動揺に気づいたのだろうか?

響人のお母さんが前の席に座り、紅茶を飲みながら響人が子供の頃の話をする。

「あの子って今じゃいつも澄まし顔だけど、母乳しか飲まなくてね、私以外の人間が寝かしつけても絶対に寝なかったのよ。でも、三歳の誕生日の時からかしら。ドレスを着せようとしたらすごく怒っちゃって、それからはお母さんはいらないってなっちゃってね」

ん?……男の子にドレス?

食べながらうんうんと相槌を打とうとして固まった。

「なぜドレスを?」

「だって、女の子が欲しかったのよね。小さいうちなら何しても大丈夫かと思ったんだけど……意外に心の成長が早くて。二歳までは誤魔化せたんだけど、三歳だといろいろ知恵がついちゃうから駄目だったみたい」
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