御曹司と溺甘ルームシェア
車を駐車すると、響人のお母さんは真面目な顔でそう忠告した。

考えてみると、まだ響人のお父さんには会っていない。

私達が婚約した時は海外出張中だったけど、さすがにもう帰国しているはず。

挨拶ぐらいしなきゃいけないはずなのに、響人は何も言わない。まあその方が私としては楽ではあるけど……。

「あの人は婿養子でね、プライドだけ高くて困ってるの。そのくせ長い物には巻かれるんだから質が悪いわ。結婚ってやっぱり、恋愛が良いわよ。私は政略結婚で失敗したけどね。だから、お父さんも響人の好きにさせてるのよ」

『お父さん』とはあの会長のことか。

響人のお母さんの時代なら政略結婚は当たり前。この世界にいればなおさら好きな人と結婚なんて難しい。

私と響人の婚約だって政略じゃないか。でも……お母さんのこのニュアンスだと恋愛と認識されている。
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